2018年4月に、ダンベルカールをしていて、右肘内側の窪み部分に痛みが生じ始めました。
肘内側の窪みは、肘窩(ちゅうか)と呼ばれる部分で、ここには肘を屈曲させる(曲げる)様々な筋肉の腱が付着しています。
その痛みが完全に消失するまで二年間かかったので、解説します。
目次
右肘内側にある筋肉(肘屈筋群)

肘内側(肘窩)には、肘を曲げたり、前腕を回したりする働きの筋肉があります。
上腕二頭筋
二の腕にある力こぶの筋肉ですね。肘を曲げると同時に前腕を回外させる(親指の方向に前腕を捻じる動き)作用があります。
上腕二頭筋は、文字通り二つの筋頭がある筋肉で、起始も二つあります。
起始の一つは肩関節の内部、もう一つは肩甲骨の烏口突起から始まっています。
注目すべきは筋肉の停止です。
二つの筋頭は、前腕の親指側の骨(橈骨)とその間の骨間靭帯に停止しています。
例えば、肘を90度曲げて掌を下に向けた状態では、前腕にある二つの骨(橈骨と尺骨)は×字のように交差して重なり合っています。(この状態が前腕の回内位(かいないい)です)
上腕二頭筋が収縮すると、その状態から橈骨を引っ張り、橈骨と尺骨は平行な位置になります。
これが親指側に向けて前腕が捻じれる(回外する)という動きですね。
ですから、上腕二頭筋を最大限収縮させるためには、肘を屈曲させながら前腕を回外させる必要があるのです。
上腕筋
上腕筋は純粋に肘関節を屈曲させる筋肉です。
起始は上腕骨、停止は尺骨です。前腕を捻じる動作には作用しません。
腕橈骨筋
腕橈骨筋は、肘関節の屈曲と前腕の回外に作用します。
起始は上腕骨、停止は橈骨の手首近く(橈骨の遠位(えんい))です。
上腕二頭筋と同様に、腕橈骨筋が収縮すると、橈骨と尺骨が×字のように交差して重なった状態(前腕の回内位)から、橈骨が引っ張られるため、前腕が回外するというわけですね。
回外筋
回外筋は上腕骨と前腕の二つの骨(橈骨と尺骨)を連結する筋肉で、文字通り、前腕を回外させる作用があります。
右肘内側の痛みの原因
右肘内側の痛みは、上記の四つの筋肉のいずれか、または全てが損傷することで生じます。
ただし、肘窩付近には手首を曲げる筋肉もおおく停止しているため、これらの筋肉が損傷した場合も肘窩に痛みが生じます。
私の場合は、ダンベルカールをした直後から痛みが生じたため、明らかに上記の四つの筋肉を損傷したと考えられます。
また、十分に疲労から回復できた状態でトレーニングしていればよかったのですが、当時は少しくらい筋肉に疲労感や違和感があっても、決められたスケジュール通りに週3~4回のトレーニングをこなしていました。
そのため、慢性的に肘関節屈筋群に疲労が蓄積しており、オーバーワークにより筋肉を傷めてしまったようです。
前腕を回外させたまま肘を伸ばすと危険
肘屈筋群を鍛えるには、ダンベルやバーベルを持ち、肘の曲げ伸ばしを繰り返す「ダンベルカール」や「バーベルカール」を行います。
これらのエクササイズでは、動作中に肘屈筋群の緊張を解かないために、常に前腕を回外位に保ったまま、肘を曲げ伸ばししていました。
肘を伸展させたとき、前腕を回内させると肘屈筋群の緊張が少し緩むからです。
上の動画撮影当時(2016年)は、肘を伸展させてダンベルを下ろしたときに、前腕を回内させています。

動作中ずっと、前腕を回外させたままカールを行うと、筋肉を追い込むことができるのですが、やり過ぎると肘屈筋群の停止部の腱を痛めてしまう危険性が非常に高くなります。
腱にテンションがかかった状態で肘を伸ばすわけですから、腱にかかる負担は相当となります。
私も右肘肘窩を痛めたときは、前腕を回外させた状態でダンベルカールを繰り返していました。
筋肉を傷めたのにトレーニングを続けていた
2018年4月に、右肘肘窩に鈍い痛みがするようになったにもかかわらず、ダンベルカールを行っていました。
勿論、ウェイトは6~8㎏と、かなり軽めのダンベルを使用していました。
しかし肘を曲げるたびに痛みがあったので、何のトレーニングにもなりませんでしたね。
逆に筋肉の損傷を悪化させ続けていたようです。
痛めた筋肉を強くマッサージしてはいけない

マッサージは疲労した筋肉に対しては非常に効果的ですが、損傷した筋肉に対しては、傷口を広げる行為でしかありません。
循環を促すことを目的に、非常にマイルド&ソフトに筋肉を押す程度にとどめなければなりません。
決して筋肉を強くマッサージしたり、グリグリを筋肉をほぐすようなマッサージはしてはいけません。
少し肘を曲げただけでも痛む肘
痛めているにも関わらず、その筋肉を鍛え続けていたわけですから、傷が治るわけがありません。

シップをはったり、サポーターを巻いたりして対処していましたが、筋トレを続けている限り、筋肉の傷が完治するわけがありません…。
筋トレ愛好家には、私のように少々の痛みは無視したり我慢したりして、トレーニングを続ける人が多いのが事実です。
筋肉が小さくなるのが心配で、トレーニングせずにはいられないという状況ですね。
しかし、これは最終的には最悪の結果を招きます。
私の場合は、お風呂に入って、湯船からお湯をくみ上げたり、チョッとした荷物を肘を曲げて持ち上げたりするのにも苦労するようになりました。
そこで意を決して、肘屈筋群を鍛えるトレーニングを一切やめることにしました。
それが2019年09月末のことです。
結局、馬鹿な私は、約1年半のあいだ、痛みを我慢してトレーニングし続けていたという訳です。
約4ヵ月で痛みが消失

2019年10月から、上腕二頭筋を鍛えるトレーニングは一切中止しました。
その結果、約4ヵ月経過した2020年01月末には、約1年10ヵ月続いた右肘内側の痛みが遂に消失したのです。
私は今月(2020年2月)から、ダンベルカールを再開しましたが、痛みはまったくありません。
勿論、現段階ではまだ6~8kgの軽めのダンベルでトレーニングをしています。
そして、非常に慎重に、肘屈筋群の腱にかかる負荷を敏感に感じ取りながらダンベルカールを繰り返しています。
筋肉を傷めたら、即、トレーニングは中止せよ
筋肉を損傷したら、その筋肉は動かさないで安静にするのが鉄則です。
トレーニングすると、痛めた筋肉を使うわけですから、傷はさらに広がります。
この当然なことを、頭では理解できていても、トレーニングを止めれないのが筋トレ愛好家です。
今回私は、約2年間もまともな上腕二頭筋のトレーニングができませんでした。

上の写真は現在の右上腕ですが、トレーニングしていない割には、筋肉が痩せ細ったという感じはしません。
鍛えていないので、固く盛り上がることはありませんが、委縮した感じはありません。
背中のトレーニングで間接的に上腕二頭筋が少しは鍛えられていたからだと思います。
あなたも、もし筋トレで筋肉を傷めたら、とにかく痛めた筋肉のトレーニングは中止しましょう。
その他の筋肉を鍛えていれば、痛めた筋肉が極端に痩せ細るということはありませんから…。