筋トレをした後、筋肉がパンパンに張って大きくなったように感じることがあります。
これはパンプアップと呼ばれる状態で、筋肉内の血液や体液が増加して膨らむ現象です。
パンプアップは筋トレ後に筋肉に生じる一時的な現象にすぎません。しばらく経つと筋肉は元通りになります。
しかし筋肉をパンプアップさせることで、筋肉内の血液や体液の循環を促進することができます。
そのため身体の様々な筋肉を意識的にパンプアップできるようになると、血行が促進され、筋肉のコリも改善するという素晴らしい効果が期待できます。
今回はトレーニングから最大の効果を得るために欠かせないパンプアップについて考えてみました。
目次
筋肉のポンプ作用を完全理解。
パンプアップについて考える前に、まずは筋肉のポンプ作用について理解しましょう。

筋肉に力を込めると筋肉は収縮します。筋肉が収縮すると、筋肉内にある動脈、静脈、リンパ腺などが圧迫され、血液や体液が絞りだされます。
この逆に、筋肉の力を緩めると筋肉は弛緩します。筋肉が弛緩すると圧迫が緩み、血液やリンパ液がどっと流れ込んできます。
筋肉は第二の心臓と云われますが、それは収縮と弛緩を繰り返してポンプのように血液や体液の循環を促進するからです。
筋肉のポンプを絞り続けた場合
では、筋肉をチョッと収縮させるのではなく、力を込めて収縮させ続けた場合、筋肉内にどのような生理現象が起きるかを考えてみましょう。
1:循環不全が起きる
筋肉内の動脈、静脈、リンパ腺は圧迫され続けると筋肉細胞ば虚血状態に陥ります。新鮮な血液や体液が入ってこないため循環不全(血行不良)が起きます。
2:痛みやシビレを感じる
循環不全は身体にとって危機的状況ですから、血液から疼痛物質が滲みでて、痛みやシビレを感じるよになります。長時間正座すると足にシビレが出るのは、足が圧迫され続けて血行が悪化するためです。
3:筋肉内に疲労物質が蓄積する。
筋肉を収縮させ続ける(筋肉に力を入れ続ける)と筋肉内にエネルギー代謝物のリン酸などが蓄積し、筋肉内成分の濃度が濃くなります。
リン酸はカルシウムと結合すると筋収縮に必須のカルシウムの働きが悪くなるため、筋肉疲労が生じます。
筋肉ポンプを絞り続けた後に、弛緩させると…
筋肉を収縮させ続けた後、力を抜いて弛緩させるとどうなるでしょうか?
虚血状態に陥った筋肉内に、ドッと血液や体液が流れ込んできます。
身体には細胞内に溶けている成分濃度を一定に保とうとする「浸透圧」があります。そのため筋肉に疲労物質にが溜まっていると、濃くなった筋肉内成分濃度を薄めるため、通常より多くの血液や体液が流れ込んできます。
このような原因により、筋トレには筋肉がパンパンに張ってパンプアップすると考えらえます。
筋肉をパンプアップさせる条件とは?
以上のことから、筋肉をパンプアップさせるには次の二つの条件が必要だということが分かります。
・筋肉を長時間収縮させ続けること。
筋肉を緩めることなく収縮させ続けると、内部の血液や体液を絞り出されます。
絞り出される量が多ければ多いほど、筋肉が弛緩した時に流れ込んでくる血液や体液は多くなります。
・筋肉内に疲労物質を蓄積させること。
筋肉が疲労して、筋肉繊維内に疲労物質が蓄積すると、筋肉内の成分濃度を薄めようとして浸透圧が働き、筋肉内により多くの血液と体液が流れ込んできます。
では次に、「筋肉を長時間収縮させ続ける」「筋肉内に疲労物質を蓄積させる」トレーニング法について考えてみましょう。
筋肉をパンプアップさせるために必要な知識。
筋肉をパンプアップさせるトレーニング法を学ぶ前に、先ずは次の言葉を完全理解しておきましょう。
【レップ】
「レベティション」の略で、反復回数を表す筋トレ用語です。「ベンチプレス・10レップ」とは「ベンチプレスを10回上げ下げする」こと。
【セット】
反復回数のまとまりを表す筋トレ用語です。「ベンチプレス・10レップを3セット」とは「ベンチプレスを10回上げ下げするのを、3回する」こと。
【ウェイト】
トレーニングにおけるウェイトとは、筋肉にかける負荷の重量です。バーベル50㎏、ダンベル10㎏などがあります。
【セット間インターバル】
1セット終えて、次のセットを開始するまでの休憩時間のこと。通常は30秒~90秒が適当だとされています。
【RM:アールエム】
レペティション・マキシマム(repetition maximum)の略で、ある重さで、何レップできるかを表す用語です。「ベンチプレス:1RM=100kg」とは「100kgのベンチプレスなら1回だけ挙げることができる」という意味です。
1RMは最大筋力を知る一つの指標ですが、1RMを正確に知ることはかなり困難です。最大重量に挑戦するわけですから必ず補助が付いていなければなりませんし、関節を痛める危険性もあります。
安全対策として8~12RM程度を基準にしても良いでしょう。私の場合は「ベンチプレス:8RM=70kg」、つまり「ベンチプレス70kgなら8レップが限界」という意味です。
以上の言葉を理解できたら、次は筋肉を上手くパンプアップさせるトレーニング法について考えてみましょう。
筋肉を上手くパンプアップさせる方法
マラソンランナーが42.195㎞走っても、脚の筋肉はパンプアップしません。何故なら、平地を42.195㎞走るのはマラソンランナーの脚にとって、たいした負荷ではないからです。
しかしマラソンランナーでも、10kgの荷物を担いで階段を何百段も駆け登ると脚の筋肉はパンプアップしてきます。
このように筋肉を鍛えるためには「負荷をかける」ことが重要なポイントとなります。
問題は「どの程度の負荷を何回」筋肉にかけるかです。
この時に必要なのが【RM:アールエム】=レペティション・マキシマムです。
筋肉に負荷をかけて鍛える「筋トレ」には次のようなパターンがあります。
1:軽いウェイトで多いレップ数をこなす。
2:中程度のウェイトである程度のレップ数をこなす。
3:重たいウェイトで少ないレップ数をこなす。

上の図は「負荷・RM・パンプアップ・筋肥大・筋持久力」の関係を表しています。
負荷が軽くてもレップ数が多くなると、筋肉を収縮させる時間が長くなります。
負荷が重たいとレップ数が少なくなり、筋肉を収縮させる時間が短くなります。しかし重たい負荷を持ち上げると、筋肉には疲労物質が蓄積しやすいので、ある程度はパンプアップが期待できます。
中程度の負荷(8RM~12RMが基準)なら、レップ数もセット数も増やすことができるので、パンプアップしやすくなります。
パンプアップだけでは筋肉量が増えない理由
パンプアップは筋肉内の血液やリンパ液の循環を促進するという素晴らしい効果があります。しかしパンプアップしただけでは筋肉は強くなりませんし、大きくもなりません。
これを理解するには筋肉が強く大きく成長する生理学的側面を理解する必要があります。
筋肉は筋繊維という糸のような組織が束になってできています。筋トレで強い負荷がかかると、筋繊維には微小な傷がつきます。この傷は、夜寝ている間に主に修復されます。
その修復過程で、筋線維は、次に強い負荷がかかっても耐えることができるように、さらに強く太く回復しようとします。これが超回復という生理現象でしたね。(超回復についての必読記事⇒【雨の日は疲労からの超回復を!】
つまり筋肉を超回復させるためには、筋繊維に微小な傷をつけなければいけないということです。
筋線維を傷つけるには、今現在の筋肉の能力を超えた負荷をかけなければなりません。筋肉が余裕で耐えることができる負荷で、レップを何百回と繰り返しても、パンプアップするだけで筋線維はあまり傷つきません。
これが「パンプアップだけさせても筋肥大しない」理由です。
筋肉を強く大きくさせる(筋肥大させる)ためには、物理的に大きな負荷をかけて、筋肉を傷つけなければならないのです。これにパンプアップを加えると、筋肥はより強く、より大きく成長しようとします。
何故なら、パンプアップさせることで、筋肉には物理的な負荷ではなく、疲労物質や疼痛物質が蓄積するという「生理的なストレス」が加わるからです。
筋肥大には強い負荷という「物理的ストレス」と、筋肉が血行不良に陥ることで生じる「生理的ストレス」の組み合わせが最も効果的だといえるでしょう。
次回は、「物理的ストレス」「生理的ストレス」の二つを筋肉に加えために最適なレップ&セット、負荷について考察しようと思います。
