ランナーのための、膝関節のケア方法 第2回目

ランニング・外側広筋・内側広筋

多くのランナーやウォーカーを悩ます膝関節の痛みは、太ももや、ふくらはぎの筋肉をマッサージすることで驚くほど良くなることがあります。

今回は、膝の痛みを自分でケアできるセルフマッサージについて考えてみましょう。

目次

「筋肉」「腱」「靭帯」の違いを完全理解

膝関節の痛みを自分で治すためには、まずは「筋肉」「腱」「靭帯」の違いについて完全理解する必要があります。

筋肉と腱の関係

ランニング 膝の痛み 解消法

筋肉は、先端が腱になって骨に付着します。

つまり関節が動くのは「筋肉の力が腱によって骨に伝わるから」です。

ランニング 膝の痛み 解消法

筋肉はよく伸び縮みすることができる柔軟な組織です。

ストレッチや柔軟体操をすると柔軟性はさらに高まります。

腱は繊維質の結合組織なので、柔軟性を高めることはできません。

腱と靭帯の違い

靭帯は腱とよく似た繊維質の結合組織です。

腱は筋肉と骨を連結しますが、靭帯は骨と骨を連結する組織です。

ランニング 膝の痛み 解消法

骨と骨が離れてしまわないようにする役割があります。

関節が変な方向へ曲がらないのは、靭帯が骨と骨を結びつけているからです。

許容範囲を超えた力が関節に加わると、靭帯が損傷してしまいます。

例えば、曲げ伸ばししかできない膝関節に、捻じれるような大きな力が加わると、膝の靭帯(前十字靭帯や後十字靭帯)が断裂することがあります。

筋肉のコリを完全理解!

長時間ランニングすると、筋肉は疲労して柔軟性が低下し、コリ固まります。

長時間のランニングやウォーキングをした後は、身体が固くなってしゃがみ込むのも一苦労した経験がありませんか?(歳をとればとるほど固くなります)

「筋肉がコリ固まる」と聞くと、筋肉全体が固くなった状態を想像してしまいます。

しかし今回注目したいのは、固くなった筋肉全体ではなく、筋肉の中にできる小さな筋硬結です。

筋硬結とは

筋肉は極細の筋線維が束になってできています。

筋線維の直径は約10~150マイクロメートル(㎛)で、長さが数センチ~30センチです。(マイクロメートル(㎛)=0.001ミリ)

筋硬結とは、この筋線維が絡まってできた塊=しこりです。

疲労した筋肉の中には、幾つもの筋硬結ができてしまうことがあります。

「筋肉のコリなんてたいしたことない…」と思われるかもしれません。

しかし筋硬結は、関節の痛みや、手足のシビレの多くに深く関係しています。

筋硬結の解剖生理についてはこちら ⇒ 必読記事筋肉のコリを解剖生理学的に理解しよう!

筋硬結は筋肉の腱を引っ張りつづける

筋肉に筋硬結ができてしまうと、筋肉はうまく伸び縮みできなくなります。

そのため、筋肉の腱は常に引っ張られたままになってしまいます。

常に緊張した状態になるので、腱の負担が増え、やがて炎症を起こしてしまいます。

筋肉の腱は一か所に集中して付着している場合が多く、周囲には靭帯も付着しています。

そのため炎症を起こした腱は、周囲の腱や靭帯に癒着し、それが関節の痛みとなります。

ランニング 膝の痛み 解消法

例えば膝関節の内側には鵞足(がそく)と呼ばれる部分があります。(腱が合わさった形がガチョウの足に似ているため鵞足(がそく)と呼ばれています)

鵞足には「半腱様筋(はんけんようきん)」「薄筋(はっきん)」「縫工筋(ほうこうきん)」という3つの筋肉の腱が付着しており、その周囲には靭帯もあります。

この部分が炎症を起こして激しく痛むのが、ランナーに多い鵞足炎(がそくえん)ですね。

炎症を起こした腱や靭帯のケア方法とは

腱や靭帯の炎症を抑える一般的な方法は、薬(抗炎症剤)を飲んだり、注射をしたり、湿布を貼ったりすることです。

しかしそれでは炎症を抑えるだけの対処療法でしかありません。

炎症がおさまっても、腱の負担が減らなければ、炎症はすぐに再発してしまいます。

根本的な治療は、腱を常に引っ張り続けている筋硬結をほぐすことです。

筋肉がうまく伸び縮みできるようになれば、腱の負担も減ります。

例えば鵞足炎では「半腱様筋・薄筋・縫工筋」の3つの筋肉の筋硬結をほぐして、鵞足にかかる負担を減らしてやらなければなりません。

筋硬結をほぐして腱にかかる負担を減らそう

腱の負担を軽減するためには、コリ固まった筋硬結をほぐして、筋肉がうまく伸縮みできるようにしてやることです。

そのための最も手軽な方法が自分で行う「セルフマッサージ」です。

太もも外側 痛み 治療法

自分で自分の太ももやふくらはぎを指圧器具(またはボールペン)などで押してみましょう。

キャッと針を刺したように、鋭く熱く痛むポイントがあるはずです。

このポイントが筋硬結です。

筋硬結の大きさは豆粒ほどの場合もあれば、マカロニほどの大きさの場合もあります。

筋硬結をうまく探し当てるには、左右の脚の同じポイントを押圧して比べるとよいでしょう。

左右で微妙に感覚が違うはずです。

筋肉全体ではなく、筋硬結をほぐそう!

筋硬結をほぐすには、指先ほどの太さのボールペンや指圧器具で、ピンポイントでほぐす必要がります。
高価なマッサージチェアでも、筋硬結をほぐすことはできません。

何故ならマッサージチェアは、筋肉全体を揉みほぐしてはくれますが、筋肉内にできた小さな筋硬結をピンポイントでほすぐことはできません。

問題は筋肉全体ではなく、小さな筋硬結にあるということを理解しましょう!

筋硬結は押圧(おうあつ)してほぐそう!

筋硬結は強引に揉みほぐしてはいけません。

ボールペンや指圧器具でゆっくりと、肌に対して垂直に数秒間、圧を加えていきましょう。

これを押圧(おうあつ)といいます。

圧を加えることで、絡んだ筋線維内に鬱血(うっけつ)した血液や体液を絞り出すことができます。

加えた圧をパッと離してやると、周囲から新鮮な血液と体液が流れ込んできます。

絡んだ筋線維を強引に揉みほぐそうとすると、逆に筋線維を痛めることがあるので注意しましょう。

筋硬結を押圧(おうあつ)する頻度について

筋硬結は1回につき10回程度、一日に数回、押圧(おうあつ)するようにしましょう。

これだけで膝関節の痛みはかなり軽減できます。

私は筋肉について専門的に勉強した理学療法なので、筋肉の腱が関節のどこに付着しているかを理解しています。

しかし筋肉について詳しい知識がなくても、押圧して痛いポイントをマッサージするだけでも効果があります。(勿論、筋肉について知っているにこしたことはありませんが…)

セルフマッサージしても膝の痛みが軽減しない場合は、半月板や靭帯を損傷している可能性もあります。

痛みが長引く場合は、病院で医師に診断してもらいましょう。病院へ行く前に、自分でできるセルフマッサージをして状態を確認しておけば、病院へ行った時に、医師の診断の役にも立ちますよ。

膝関節に痛みを引き起こしている筋肉の押圧ポイント

ランニング 膝の痛み 解消法
引用【背骨のしくみと働きがわかる本】秀和システム・石部伸之著

上の図は、膝関節に痛みを引き起こす可能性がある筋硬結を点で示しています。

筋硬結ができるポイントは人によって様々です。

上の図を参考に膝関節に付着している筋肉を押圧していきましょう。

一つ一つの筋肉に関する解説は次の投稿でします。

このように関節の痛みは、その関節に付着している筋肉にできた筋硬結が原因である場合が多々あります。

関節そのものよりも、その関節を動かす筋肉をケアすることで、関節の痛みを改善できます。

ランニングやウォーキングを頑張った後は、セルフマッサージで筋硬結をほぐすようにしましょう!

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