ターゲットの筋肉(大きくしたい筋肉)に最大筋力を発揮させるためには、その筋肉を隔離(アイソレート)させるフォームが重要であると前回の記事で解説しました。必読記事⇒(オーバーロードの原則:完全理解すべき筋トレの原則)
動作に関与する他の筋肉をできるだけ排除して、ターゲットの筋肉だけでウェイトを持ち上げるフォームが大切ということです。
今回は、筋トレのフォームで重要なもう一つのポイント「フルレンジで動かす」ことについて解説します。
目次
フルレンジとは?
フルレンジという言葉を理解するために先ず、「関節」「可動域」「エンドポイント」「エンドフィール」について理解しましょう。
関節
関節とは、骨と骨が靭帯や筋肉で繋がれた部分のことです。筋肉が収縮すると、骨と骨が近づくので関節が動くというわけです。
可動域(レンジ)
可動域(レンジ)とは関節の動く範囲のことです。フルレンジとは全可動域という意味です。個人差はありますが、関節が動く範囲は概ね各関節で決まっています。例えば肘や膝は180度以上伸びません。
エンドポイント
フルレンジの最終位置、つまり関節が可動域の最後でそれ以上動かなくなるところがエンドポイントです。
エンドフィール
エンドフィールとは,エンドポイントで感じる抵抗感の種類のことです。大まかに三つに分けることができます。
① 骨性
関節可動域の最後で、骨と骨が当たるような抵抗感により、それ以上動かなくなる感覚です。例えば肘を伸ばした時に感じる抵抗感が骨性のエンドフィールです。肘はその構造上、肘の骨と骨がカチッと当たることでそれ以上伸びなくなります。
② 関節を結んでいる靭帯などの関節包性
関節可動域の最後で、関節深部の靭帯などが伸びきって、それ以上動かなくなる感覚です。
③ 筋肉などの軟部組織性
筋肉などが伸びきって、それ以上は関節が動かなくなる感覚です。
ちなみにケガなどによる痛みで、関節をそれ以上動かせない場合は「痛み」がエンドフィールとなります。
フルレンジで関節を動かすと筋肉は最大限に伸び縮みする。
関節をフルレンジで動かすためには、その関節を動かす筋肉を「思いっきり伸ばして、思い切り縮める(伸縮させる)」必要があります。(最大伸張⇔最大収縮)
つまり「フルレンジで関節を動かす」ことで「筋肉を最大限に伸縮させること」が可能となり、「筋肉に最大の力を発揮させる」ことも可能となります。
例えば「思いっきり垂直跳びする」時を思い浮かべてください。
いったん深くしゃがみ込んでから、思い切り跳び上がるはずです。
これはしゃがみ込むことで跳び上がるために必要な臀部の筋肉を伸ばしてから、強く収縮させることでパワーを生み出しているのです。
パワーと力の違いを知っていますか?
思い切り伸ばした筋肉を思い切り縮めるには、そのスピードについても考慮しなければなりません。
あなたは「パワー」という言葉を使うことがあると思います。「パワー溢れる動き」「強いパワーがある」といったように…。
あまり理解されていませんが「パワー」=「力」ではありません。
「パワー」=「力」×「スピード」です。つまり「重たい物を速く動かせる」ことがパワーです。
思い切り伸ばした筋肉を、ゆっくりと縮めても大きなパワーは発揮できません。できるだけ速く収縮させなければならないのです。
「アイソレート」「フルレンジ」「スピード」が重要である。
以上のことから、ターゲットの筋肉(大きくしたい筋肉)に最大筋力を発揮させるためには次のポイントに留意することが理解できたと思います。
・ターゲットの筋肉をアイソレートさせるようなフォーム
・そのフォームで6~12レップ動かせるウェイトを負荷とする。(最大筋力を高めるためには1RMよりも6~12RMが適切です。⇒必読記事(完全理解すべき基本的な【筋トレ用語集】その1)
・フルレンジで筋肉を伸縮させる。
・できるだけ速くウェイトを動かす。
ただし筋トレ初心者の場合、先ずは「筋肉をアイソレートさせてフルレンジで動かせるウェイトを完璧なフォームで」行えるようになりましょう。
6~12RMのウェイトを挙げる場合、必然的にスピードは遅くなります。速くウェイトを挙げることは重要ですが、スピードだけにこだわると適切なウェイトを選べなくなります。
ポイントとしては6~12RMのウェイトを「爆発的に挙げる」ことでスピードという要素をクリアできます。
フルレンジで動かす時の注意点
「ターゲットの筋肉をアイソレートさせたフォームで、フルレンジで、6~12RMのウェイトを爆発的に挙げる」ことが最大筋力を発揮させて筋肉を大きくさせるコツです。
しかし次の点に注意しなければ、簡単に関節や筋肉を傷めてしまうので注意してください。
ブリをつけて動かさない。
エンドポイントでは、筋肉を最大限伸ばしたところから逆に縮めようとする瞬間があります。ここで決してブリ(反動)をつけてはいけません。エンドポイントまで筋肉を伸ばしたら、それ以上伸ばさずに、収縮させてください。
筋肉を収縮させる瞬間、僅か1mmでも筋肉が伸びてしまうと、筋線維がオーバーストレッチされていまいます。それが反動となり、筋肉や関節内の靭帯を損傷する危険性が高まります。
筋肉の緊張を解かない。
エンドポイントまできても、決して筋肉の緊張を解いてはいけません。
筋肉に常に力を込めた状態で関節を曲げ伸ばしすることで、エンドポイントでのブリ(反動)をなくすことができます。
また肘や膝では骨性のエンドフィールを感じる瞬間があります。骨性エンドフィールは骨と骨があたることで関節が止まります。
骨と骨で関節を止めた瞬間に筋肉の緊張は解けてしまいます。
肘や膝などの骨性エンドフィールがある関節では、フォームはフルレンジまで行ってはなりません。(これについては別記事で詳しく解説します)
まとめ
筋肉を大きくするためには、その筋肉の最大筋力を発揮させるフォームが重要です。
そのためには「ターゲットの筋肉をアイソレートさせて、フルレンジで、6~12RMのウェイトを爆発的に挙げる」ことが重要です。
その時の注意点は「エンドポイントでブリ(反動)を使わないことと、フルレンジにわたって筋肉の緊張を解かない、つまり筋肉の力を抜かないこと」が重要です。
さて今回のフルレンジでの関節の動きは「筋肉を縮める」ことで「ウェイトを挙げる」ことに焦点をあてて解説してきました。
「筋肉を縮める」とは筋肉の長さが短縮しながら力を発揮することです。
これが求心性収縮(コンセントリック・コントラクション)と呼ばれるものです。
例えばダンベルカールで肘を曲げてウェイトを挙げるとき、上腕二頭筋は求心性収縮しています。
では肘を伸ばしてダンベルを降ろすときはどうでしょうか?
筋肉の緊張を解かずに力を入れたままダンベルを降ろしているはずです。
この時、上腕二頭筋は伸びながら力を発揮しています。
このように筋肉の長さが伸びながら力を発揮することを遠心性収縮(エキセントリック・コントラクション)といいます。
次回は筋肉を大きくさせるために必要なもう一つのポイントである「筋肉の収縮の仕方」について解説します。