西日本豪雨災害の影響により9月9日開催予定だった第8回倉敷国際トライアスロン大会は中止となりました。
トライアスロンに向けてハードに鍛える必要がなくなったので、これを機にボディビル中心のトレーニングに戻ろうと思います。
私の目標は「ボディビルダーの筋肉と、トライアスリートの持久力を併せ持った究極の肉体」です。
その目標に向かってトライアスロンとボディビルで身体を鍛え抜いてきました。
しかしボディビルダ―の体形をしたトライアスリートがいないことからわかるように、ボディビルとトライアスロンの両立はかなり困難です。
今回は7年間、トライアスロンとボディビルを同時並行してきた私が、二つのスポーツの両立の難しさについて解説します。
目次
ボディビルとトライアスロンの違いとは?
私はトライアスロンを完走するために、ロードバイク、ランニング、スイムといった有酸素系トレーニングに大変な時間と労力を費やしてきました。
同時にボディビルのトレーニングも続けてきました。
しかしトライアスロンをしながら筋肉を増やすのは至難の業です。
何故なら、ボディビルとトライアスロンでは運動エネルギーに対する考え方が全く異なるからです。
人間は生きて活動するために食事から栄養素を摂取します。
それを体内で消化して、エネルギーとして利用したり、身体を作る材料にしたりします。
使われなかった栄養素は、脂肪などに合成されて体内に蓄えられます。
エネルギーが必要になると、身体は蓄えた体脂肪を分解してエネルギーとして使うわけですね。
ただし、身体は体脂肪だけでなく、体脂肪以外の細胞も分解してエネルギー源として使おうとします。
このように身体はエネルギーや細胞を合成したり分解したりしているのです。
これが新陳代謝と呼ばれるものですね。
新陳代謝における「分解」を「異化:いか=カタボライズ」、「合成」を「同化:どうか=アナボライズ」といいます。私達が太ったり痩せたりするのは、分解と合成(異化と同化)があるからというわけです。
当然ながら、筋肉も例外ではありません。合成(同化)されたり分解(異化)されたりしながら、増えたり減ったりしているのです。
ボディビルとトライアスロンの違いを理解するためには、この「新陳代謝」「合成と分解」「異化と同化」の意味を理解する必要があります。
ボディビルは筋肉を合成するスポーツである。
ボディビルとは身体の筋肉量を増やす運動です。
通常、身体は体脂肪だけではなく、筋肉も分解してエネルギー源として利用しています。
激しい運動でエネルギーを大量に消費したり、摂取するタンパク質が不足したりすると、筋肉が減るというわけです。
また、血液中には常に一定量のタンパク質が存在します。(血液検査項目の「総タンパク質」「アルブミン値」「グロブリン値」ですね。)
アルブミンは、血液中の水分を一定に保ち、グロブリンは抗体を作って免疫機能を維持するといった重要な働きをしています。
もし摂取するタンパク質が不足して、血液中のタンパク質の量が減ると、身体は筋肉を分解して血液中のタンパク質量を増やそうとします。
身体は筋肉を合成しますが、同時に分解もしているというわけですね。
ボディビルダ―が大量のタンパク質を摂取するのは、筋肉の合成を促進しながら、筋肉が分解されるのを防ぐためでもあるのです。
つまりボディビルとは「可能なかぎり筋肉の分解を防ぎなら、筋肉を合成する」運動といえます。
トライアスロンはエネルギーを分解するスポーツである。
ではトライアスロンはどうでしょう?
トライアスロン(オリンピックディスタンス)はスイム1.5㎞、バイク40㎞、ラン10㎞を連続して行う競技です。
これだけの運動を続けるためには、身体に蓄えたエネルギー源を可能な限り分解して使うことになります。
トライアスロンの目的は筋肉を増やすことではありません。
ですから筋肉が分解されてエネルギーとして使われても、あまり問題ではありません。
実際、長時間にわたってスイミング、ランニング、ロードバイクで身体を動かし続けるためには、体脂肪だけでなく、筋肉が分解される割合も増えてしまいます。
ただ、トライアスロンをしながら筋肉の分解を最小限に食い止める方法は存在します。
筋肉を分解しないように、身体に吸収されやすいタンパク質を運動中ずっと補給し続ければよいのです。
BCAAなどのサプリメントは、トライアスロンの練習をしながらでもドリンクとして飲むことが可能です。
しかし、筋肉の分解を最小限に食い止めることはできても、トライアスロンの練習をしながら筋肉の合成を促すことは困難です。
筋肉の合成に必要な条件
筋肉を増やす(合成する)ために必要なことは、今ある筋肉の限界を超えた負荷を与えることです。
筋トレで重たいバーベルやダンベルを持ち上げる理由がこれです。
筋肉の限界を超えた負荷で刺激しなければ、筋肉は今以上に太くなろうとしません。
そして筋肉を増やすためには、筋肉の材料となる栄養(タンパク質)を大量に摂取する必要もあります。
材料がなければ、筋肉は大きくなりようがありませんからね。
また筋肉が増えるためには、休養も必要です。
筋肉は休養している時に合成されるからです。
つまり「負荷、栄養、休養」のどれか一つが欠けても筋肉を増やすことはできません。
長時間の有酸素運動は、筋肉の合成を妨げる
トライアスロンのような長時間の有酸素トレーニングは、筋肉を増やすための「負荷、栄養、休養」というサイクルを乱します。
せっかくボディビルで筋肉を合成しても、トライアスロンの練習によって、筋肉はエネルギーとして分解されてしまうからです。
これはトライアスロンに限ったことではありません。長時間の有酸素運動では、エネルギーを作り出すために、どうしてもある程度は筋肉が分解されてしまいます。
マラソンランナーやトライアスリートに、ボディビルダーのようなムキムキの筋肉をした人がいないのは、仕方がないことなのです。
ただ、どちらかを少し犠牲にすれば、ボディビルとトライアスロンの両立は不可能ではありません。
筋肉を分解させない程度のユルさで、トライアスロン完走を目指すのです。(私がこのパターンですね。)
…というわけで、第8回倉敷国際トライアスロン大会が中止となったので、しばらくは激しい有酸素系トレーニングは止めて、筋肉を徹底的に増やしたいと思います。
増やした筋肉を減らさないためにも、来年は一人でスイム、バイク、ランの全てをこなす個人部門ではなく、三人でそれぞれのパートを受け持つリレー部門に、S61児島高校卒の男達と出場したいですね。